ぐるーんが国境を超えて親と離れて暮らす子ども達の幸せについて情報共有しようと英語で情報発信し始めて、早一ヶ月。先日、ノルウェーのLinda Rahbekさん(http://www.facebook.com/linda.rahbek.33 ) から、以下の情報を提供いただきました。
「 I know that there are quite many couples that are unable to become pregnant themselves, and therefore wants to adopt. 」
実はノルウェーは国際養子縁組が非常に盛んな国。人口比に占める割合は、ノルウェーとスウェーデンで世界一、二位を競うほどです。
早速、その分野の事情に詳しい島根大学の出口教授に論文を送っていただき、北欧諸国の養子縁組事情について調べてみました。ご本人の許可を得た上で、みなさまともシェアしたいと思います。
出口教授の論文「養父母になった国際養子たち」の冒頭は次のようにはじまります。
「スカンジナビア諸国では、不妊のカップルが子どもを持つ選択肢として国際養子縁組が定着している。養子はアジア・アフリカ・南アフリカの諸国を出生国としており、国際養子は異人種間養子でもあり、親子の間に生物学的・遺伝子的絆がないのは、一目瞭然である。彼らの間では、遺伝子や血縁と言った自然のつながりより、日々の生活をともにしたつながりが親子の絆として大切にされている。」
なぜ国内の子どもを養子縁組しないのか出口教授に質問したところ、以下の回答をいただきました。
「ご推察の通り、国内養子の数自体が少ないです。中絶も可能ですしシングルマザーでも子供が育てられるよう、支援が制度的に整っています。また国内で保護が必要な子は里子に出されます。すぐ養子に出されるのではなく、スウェーデンの親の親権が配慮されていて、里親が養子にしたいといっても、実親がノーといえばそれまでです。」
実親の親権が最も尊重されるのは日本と同じ。違うのは、しかし、ノルウェーをはじめとする北欧諸国の多くのカップルが海外養子縁組に目を向けている点は決定的に違います。その根底には、親子の絆に対する日本人と北欧諸国の人々の考え方の違いがひとつの理由としてあるようです。
論文「スウェーデンの国際養子〜その可能性と問題点〜」では、東京で働いている韓国の乳児院から養子として引き取られたスウェーデン女性が日本について語った以下の言葉が引用されています。
「日本で国際養子縁組をするのは難しいと思う。なぜなら日本人はとてもnationalisticだから。(略)違った人種の人たちに日本人はもっとopen-mindedになるべきよ。それに養護施設にはたくさんの日本人孤児がいるのに普通の日本人はそのことに気づいていない。」
ナショナリスティックで血縁にとらわれすぎだと彼女は感じているのです。
「養父母になった国際養子たち」の最後で出口教授は、以下のように述べてもいます。
「国連の子どもの権利条約や国際養子縁組に関するハーグ条約、さらには配偶子提供による不妊治療におけるドナーの秘匿名を法律で定める動き等によって、親子関係とは生物学的・遺伝子的関係であり、それはけして解消できないという観念がグローバル化しつつある(Howell2007;19,Howell
2003)。しかしその源である欧米社会が、そうした考えによってすみずみまで席巻されているととらえるのは「オクシデンタリズム(逆向きのオリエンタリズム)」というべきであろう。遺伝子や生物学的起原によって決定されるアイデンティティがすべてではないと実感している人々の声を抑圧してはならない」
親子とは何か、家族とは何か。
この深い問いかけに正解はないのでしょう。
でも、日本では血の絆が重んじられてきたからというだけで、子どもに恵まれないまま諦めていたり、里親里子は普通の親子とは違うとなんとなく思っているとしたら。
そのこだわりを考えなおすことこそ、親と離れて暮らしている子ども達のために、私たちができる第一歩かもしれませんね。