「あたしが高校出たばかりの時は、あんなに無邪気になれなかった。」
23歳ぐらいだろうか、幼さの残る顔で彼女は言った。
「施設を出たばかりの頃なんて、足が地に着いていなかった。急に自由になってうれしかったけど、どうしていいかわからなかった。とにかくお金もないしね。」
窓の外を通る女子高生たちを眺めながら、彼女は言った。
「お金をかき集めて入った専門学校に行って、終るとすぐアパートに帰ったの。最初はね、ひとりでご飯食べるのも楽しかったわ。施設に入ってからはね、ずーっとみんな揃って、同じ時間に、同じものを食べていたから。少しご飯を炊いて、総菜を買ってきたり、菓子パンだけで過ごしてみたり。今思えばわびしいんだけど、自由っていいなって思ったわ。大人になった気がしたのね。」
思い出話をしている彼女は、なんだか楽しそうに見えた。
「そのうち友達もできて、今のアルバイトを始めたの。お化粧の仕方も覚えて、派手な洋服も買った。慣れるってあっという間ね。そのうち、お酒を覚えて、男ができて、楽しい遊びも知ったわ。お金があるとね、全てが変わる気がするの。人生が思う通りになるような気がするのよ。」
表情を曇らせた彼女は、私の顔も見ないまま続けた。
「お金、お金、お金。否定する人もいるでしょうけど、あたしにとってはお金がすべて。今じゃすっかり稼ぐのがうまくなっちゃった...。」
彼女は急に笑顔を見せて
「……な~んて。変な話しちゃったわ(笑)あたし行かなきゃ! これから仕事なの!」
そう言って笑って走り去った彼女の顔には、まだあどけない少女の面影があった。
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