茶色いお弁当

私が3歳のときに両親が離婚し、子どもがいなかったおじさんとおばさんに引き取られた。

 

2人は、私を引き取った頃にはすでに50歳近くで、毎日地味な和食ばかりが食卓に並んだ。外食する機会もなく、母の作った洋食が懐かしかった私は、毎日のように食卓で泣きわめいた。

 

中学校は、毎日お弁当。周囲の子の華やかなお弁当に比べ、おばさんの作った「茶色と白だけ」のお弁当はとても恥ずかしかった。蓋を開ける気にもならず、購買のパンで空腹を満たし、中身は帰り道で捨てていた。

ある日、いつものように公園でお弁当を捨てていたら、ばったりおばさんに会ってしまった。「お弁当、傷んでた?」という問いに、焦った私は何も答えることが出来なかった。おそらくおばさんは、私の態度から悟ったのだろう。翌朝「ごめんね、今まで気が付かなくて。これでパンを買ってね」とお金をくれた。

 

謝りたかったけど素直になれなくて、かろうじて「お金かかるし、明日もお弁当持っていく」とだけ伝えた。翌日のお弁当には、初めて真っ赤なウインナーとマヨネーズまみれのブロッコリーが入っていた。おばさんなりの「カラフルな」お弁当を見て、ますます私の心は痛み、以来、お弁当は残さずに食べるようになった。

 

ひと月前、おばさんが倒れた。駆けつけると、ずいぶんと痩せて小さくなっていて、昏々と眠り続けていた。咄嗟に「おばさんのお弁当、また食べたいよ。すっごくおいしかった!」と話しかけた。

 

おばさんは目をうっすら開いて、弱々しく微笑んだように見えた。

 

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